【小説】燃ゆる子 プロローグ
その日のことは灰ジイに聞いた。
全部自分がやったのだと言われた時は信じられなかったがそれでも唯一生き残ってしまった事を考えると納得もいく。
俺は裸一貫で池の底で衰弱しきっていたらしい。
ガキの頃はパゴ池に遊びに行ったり、村の水を汲んだり俺たちの村にとっては大きな存在だった。
俺が発見された時に池の水は全部干上がっていたらしい。
村は黒く汚染され家屋はぼろぼろに崩れ落ちていたと灰ジイは言う。
その時の記憶はほとんどなくただ「熱い、熱い」とのたうち回っていた自分の叫び声が耳に残っている。
ぼやっ、と靄のように自分を包みこむオレンジ色の光を見た時にこの世の終わりでも見たかのような恐ろしさを感じた。
そこからは全く覚えてなく、気がついた時には灰ジイと一緒にいた。
------------------------------------------------
樹元前600年
偽聖書「ガハウルド」より引用
『大樹の施しを受けし地上の栄華は終わることなき。破滅を齎す悪魔を呼び覚ますのは汝らの卑しき心のみ。我らは大樹の元に。』